お見合い相手は冷血上司!?
「ありがとうございます!」

 木津主任は綺麗に整えられたヒゲをいじりながら、上機嫌に私の肩をバンバンと叩いた。

 私たちが見ていたのは、今日から放送されるお馴染みの炭酸飲料の新CM。子供の頃からの夢だった広告会社に勤めて四年、私が初めて単独で契約を取った仕事だ。

 完成までに何度も見た映像でも、実際にテレビで流れているのをこの目で見ると、やはり胸に込み上げてくるものがある。

「先方もこのコマーシャルをとても気に入ってくれているみたいだし、うちもまた一ついい仕事が出来るってもんだね!」

 ガハハ、と大口を開けて笑う彼は、私の手を取りオフィスの真ん中でワルツを踊り出す。

 黙っていれば見た目はジェントルマンのように素敵なのに、彼がイマイチモテないのは……こういう不可思議なところに原因がありそうだ。

 彼の奇行にとっくに慣れている営業課のみんなは、誰も気にも留めていないけれど。
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