とりまきface
 しかし、疲れは溜る。


 忙しくて展望台にも行けてない。

 さすがに、その日の昼食は食堂でとりまきの笑顔を作る気力が無かった。

 勿論、遥人の顔は見たい。


 菜々はあまり人気のない屋上で食べる事にした。

 少し遠いが飛行機も見られる。


 屋上のベンチに座り弁当を広げた。

 疲れと空腹に、自分で作った卵焼きが染み渡る。

 まあ、その為に自分で作ってくるのだが……


 以外な事に、めったに開かない屋上の扉が動いた。


 屋上に出てきたのは、遥人だった。


 驚きのあまり、箸を持つ手が動かない……


 遥人は、菜々を見ると眉間に皺をよせ、明らかに嫌そうな顔をした。



 菜々は、思わず目を逸らし弁当を食べ続けた。

 遥人は菜々が声を掛けてこない事に、安心したのか、菜々とは反対のベンチに座り、コンビニの弁当を広げはじめた。

 多分、これはチャンスなんだろうが、菜々は遥人の疲れた表情に、声はかけていけない気がしたのだ。


 菜々も、新作発表会の準備にかなり疲れが出ている。

 部長となれば責任も重い、疲れは相当なものだろう……



 菜々は遥人の前に行き、爪楊枝に刺した卵焼きをコンビニ弁当の白いご飯の上に乗せ、何も言わずに、屋上の扉へと向かった。


 遥人が食べたのかどうかは分からないが……
< 5 / 26 >

この作品をシェア

pagetop