とりまきface
 分かっている…… 

 男性が選ぶ子が自分のような女で無い事くらい……


 新作発表会準備に、総務から応援に来たのが、山口(やまぐち)亜美(あみ)二十二歳。
 一言で言って可愛い。
 ひかえ目で素直な子だ。

 もちろん遥人のとりまきの中には居ない。



 不安が的中とはこういう事だろう……

 菜々は、気付いてしまった…… 


 遥人の亜美を見る目が、他の女子社員を見る目と違う事を……



 菜々はショックと同時に、焦りが募り出してしまった。


 疲れている場合では無い。

 昼食は食堂へ行きとりまき達の中に入り、必至で遥人に話掛けた。

 しかし、遥人は殆ど反応を示さない。

 それは、とりまきの誰に対しても同じだ。


 しかし……  遥人の目は、窓際の席で女の子達と食事をしてる亜美を見ていた。




 それから間もなくだった。

 遥人が亜美と付き合いだしという噂を聞いたのは……


 誰の誘いにも乗らなかった遥人が、亜美と食事をしているのを見た社員が居たのだ……



 菜々の片思いは終わってしまった……


 ろくに、会話をする事も出来ずに……


 本気で好きだったのに、とりまきの中にいる事しか出来なかった……



 いくら、ひかえめの可愛らしい子が好みと分かっていても、人気のある遥人にひかえめでなどいられなかった。


 二十七歳の女には、情けない話だ……



 菜々はその日から、遥人のとりまきを辞めた。

 遥人に話かける事も辞めた。


 まあ、遥人が気付くはずも無いのだが……
< 6 / 26 >

この作品をシェア

pagetop