副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
次の日の役員会はあっさりと終わった。
常務の不正は明らかで、陰謀があきらかになり、社長より地方への出向が言い渡された。

苦々しい顔をし、会議室を後にした木下を誠は神妙な面持ちで見ていた。

「副社長、よく見つけたな」
晴れやかな顔で誠を見ていた父正幸は言った。
「社長……」
「こういう事もあるとは思ったが、自分自身で乗り越えないと、認められないからな。後任はいくらでもいるから安心しろ」

「はい」
誠もほっとした顔をした。

「それにしても、よくできた資料だな。水川君か?」
「はい。すごい能力の持ち主です」
正幸は、資料をもう一度見た。
「俺が、見抜いて秘書にしてよかっただろ?」
正幸は自分の手柄とでも言わんばかりに笑った。

「よく言うよ……。彼女なら俺が手を出さないとでも思ったんだろ?」
つい、誠もため口になり、父を睨みつけた。

「まあ、そうだ。綺麗な人だとすぐ手を出しそうだったからな」

「仕事とプライベートは別……」
そこまで言って誠は言葉を止めた。

「なんだ?お前もう手を出した後か?」
正幸は怪訝な顔をすると、誠を見据えた。
「あの子でもってなんだよ?見かけじゃないだろ?人は」

「お前の口からそんな言葉がでるなんてな……」
正幸は驚いた顔をしてニヤリと笑った。
「出してないよ。ただ……」

「ただなんだ?」
誠は正幸の問い掛けに、少し考えた様子を見せた後、

「なんでもないよ」

そんな、息子の様子に、

「誠、見合いでもするか?どうせ、本気の女いないんだろ?そろそろ、きちんとしないと社会的信用がないぞ」

正幸は静かに言うと、表情をいつもの硬い表情に戻した。
「本気の女……ね」
「考えとけ」
そう言うと、正幸は会議室を後にした。
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