副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
(もう少し飲んでから帰るか)


【香織ちゃんと一緒?】

誠は弘樹にメッセージを送ると、BARへと戻った。

【明日早いみたいだからもう分かれたよ】

【もう少し、飲まない?】

【OK、戻る】

「悪いな弘樹」
戻ってきた弘樹に、誠は軽く手を上げた。
「莉乃ちゃんの家行かなかったんだ。まあ、こうなる気がしてたけど」
弘樹は席につくと、ビールを頼み、ニヤリと誠を見た。
「うるさい」
誠はすこし微妙な顔をして、ビールを口にした。
「なんで?」
弘樹はニヤリと笑うと、誠をじっと見た。
「わかってるだろ……。お前その顔」
誠はため息をついた。

「手を出すのが怖い?お前が?」
弘樹は、煙草に火をつけ、ゆっくりと煙を吐き出した。

「怖いよ。拒否られるのも、全部。それに、ゆっくり行きたい」

「さんざん、泊まって一緒に寝てたのに?」

「あの時は……。理性が勝つだろ?自分の物でもないし」

弘樹は煙草の箱を開け、1本出すと箱を差し出した。

「吸うか?」
誠は、久しぶりに1本とると口にくわえた。
弘樹の付けたライターの火に煙草を近づけゆっくり吸い込んだ。
大きく息を吐き出すと、
「それに、こないだの事件もあるから怖くて仕方ないんだよ。大切にしたいけど、触れたくて仕方ない」

「加減を間違うなよ」

そんな誠に弘樹は真面目な瞳を向け、タバコを灰皿に押し付けながら言った。

「加減?」

わからないと言った様子の誠をまじまじと見ると、
「お前さ……マジメな付き合いっていつぶりだ?ガキの恋愛しかしてないだろ?というか真剣に人を好きになったことあったか?」

誠は弘樹の言葉に、自分の今までを思い出した。

「真面目って……。昔は真面目に付き合ってたつもりだけど……。好きになったことって言われるとわからないな。昔から、俺の地位や家柄によってくる女ばかりだったし……。好きだとは思っていたけど、今の莉乃への気持ちよ同じかときかれたら違うかもな」

最近はどうせ自分の中身など見てくれない。そんな思いから遊びの関係しか気づいてこなかった。
真剣に交際するという言葉を使ったことなど、もう思い出せないほど過去の事だった。

「だろ?だからきちんと莉乃ちゃんの気持ちとか間違えないようにしろよ。大切にするだけが付き合うってことじゃないぞ」


弘樹の言葉に、誠は大きなため息をつくと、
「難しい事言うなよ……やばいな……」
髪をかき上げると、誠は頭を抱えた。

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