副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
secret 7

オレは好きだよ?

3か月後


朝、莉乃はいつも通り出社し、エレベーターを待っていた。

『見て、秘書の水川さん、なんであの子が秘書……って思ってたけど……』

『ストーカー避けだったらしいよ、あの格好』

『やっぱり、あの時助けたのもただの秘書だったからだんだよね。だって副社長って……」
そこで、エレベーターがきて、莉乃はハッとして乗り込んだ。

(副社長がなに?今の会話って……どういうこと?)


女性社員の噂話を聞きながら、軽くため息をついた。

(本当に人気あるんだよね。噂ばかり先行するし。そして人って外見で判断するんだな。まったく)

莉乃はあの日以来、誠の秘書として多少ふさわしくすべきと思い、体形に合ったスーツとメイク、メガネも外し、髪も秘書らしいアップスタイルにしていた。

そして立場もあるので、会社では2人の関係は秘密にしていた。

見かけは変わっても、副社長と秘書としての距離を社内では保っていた。



コツコツとヒールを鳴らし、平静を装いながら莉乃は秘書課にに行くと夏川がいて少し身構えた。
莉乃は挨拶だけしてすぐに部屋を出るつもりでいた。
「水川さん」
少し含みを持たせたような、いつもの呼び方と違う夏川の声を聞いて、莉乃はやっぱりな……と内心うんざりした。

「はい」
振り返り夏川を見ると、やはり薄い微笑みを浮かべ、腕を組んで莉乃を見る夏川が目に入った。

「ねぇ、知ってるの?あなたは。副社長が東洋商事のご令嬢とお見合いすること」

「え?」
何を言われても冷静にと言い聞かせていた莉乃だったが、余りにも予想外の夏川の言葉に、驚いて目を見開いた。

「その顔じゃ知らなかったのね。あんな風に助けてもらって、噂にまでなってたからてっきり知ってるものだと思ってたわ。でも知ってたとしてもどうしようもないわよね。あなたじゃ副社長と釣り合わないもの」

夏川は不敵な笑みを浮かべると、莉乃をジッと見た。
その言葉にギュッと手を握りしめると。

「じゃあ、夏川さんも釣り合いませんね」

「なっ!……」

「失礼します」
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