副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
(しまった……。余計な事を言っちゃった……でも。でも……。なにお見合いって?東洋商事のご令嬢?釣り合わないことぐらい……)

早足で副社長室に入り、バタンと扉を閉めると莉乃はその扉にもたれたままその場を動けなかった。

かろうじて浮かんだ涙だけはなんとか押し戻すと、大きく息を吐いて自分の席へと座った。

その日は、運がいいのか誠は出張でいなかった。

(一人でよかった……。こんな気持ちのまま誠になんか会えない……)

莉乃はデスクで頭を抱えた。

(誠ぐらい立場のある人は、然るべき人との結婚……それが当たり前か……)

莉乃は、朝の噂もこの事だと一人納得すると、呆然とした頭をなんとか仕事に切り替えた。
< 206 / 323 >

この作品をシェア

pagetop