副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
「莉乃さんすみません……不安にするつもりじゃなかったんですけど、先輩と副社長の話は本当に素敵で……私は応援したいだけです!」
力を込めて言った知里ちゃんは、見かけによらず漫画やロマンス小説が大好きな夢見る女の子だ。
簡単に話した私と誠の付き合うまでの話を聞いて以来、素敵!萌える!そんな事を言ってうっとりしてくれる可愛い後輩だ。


「ありがとね」
それだけを答えると、私は仕事へと戻るために廊下に出た。

『副社長!これ』
その甘い声の方を見ると、会議から戻ってきた誠が女の子に捕まっているところだった。
咄嗟にまた秘書課へと戻ると、千里ちゃんと目が合って、苦笑いを浮かべた。
「莉乃さん、目撃したんでしょ?なんで隠れるんですか?」
「だって……」

「莉乃さんって普段すごくできる感じなのに、恋愛に関しては本当に奥手というかなんというか……」
「千里ちゃん……そんなに言わなくても……」
そう言いかけた私に、
「いいですか!莉乃さん!相手はあの副社長ですよ!いかなる敵もなぎ倒して……って莉乃さんには無理か……」
大きくため息をつき千里ちゃんは、秘書室を出ようとノブに手を掛けた。
「ちょ、ちょっと千里ちゃん!」
もしかしてあの女の子たちの所に行くのではないか気が気じゃなくて、声をかけるもすぐに千里は「もういませんでした……」と悔しそうに戻ってきた。

そこへ夏川さんが戻ってきたため、そこでこの話は終わりになって私は少しほっとしたが、さっきのチョコレートを誠が貰ったのか気になってため息が出た。

モテる彼氏も苦労するよね……。

副社長室に戻りながら、本当に香織の作戦しか残ってない気がして「どうしよう……」とつい呟いていた。
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