副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
「お疲れ様です」
莉乃は表情を崩さないように、夏川の隣に行くと声を掛けた。

「お疲れ様。副社長のコーヒー?」

「はい」

夏川は、すでにお茶を入れ終わっていたようで、莉乃に場所を譲るとじっと莉乃を見た。
「なんで、あなたなの?」
呟くように言った言葉だったが、はっきりと莉乃にも聞こえ莉乃はため息をついた。

( 夏川さんも副社長ね……本当にあんな女癖の悪い人にどうしてみんな惹かれるの?男は顔じゃないのに!)

莉乃は嘘っぽい誠の笑顔を思い出して、「ありえない」と心の中で呟くと、ゆっくりとコーヒーメーカーから落ちるコーヒーを見ていた。
給湯室にコーヒーの香りが充満すると、莉乃は給湯室を後にした。

本来なら、もっとやっかみに合うはずだろうが、他の女性社員からは、莉乃なら大丈夫だろうという噂があることを莉乃は百も承知だった。


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