副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
「先にありがとう」

「ゆっくりできた?」
誠の声が聞こえて、莉乃は何も考えず声の方に振り返りながら笑顔を向けて、ハッとして慌てて目線を逸らした。

(しまった!軽く泊まればなんて言うんじゃなかったよ……私のバカ……)

お風呂上がりの誠は、綺麗な顔が少し蒸気し、髪が濡れ、いつもは隠れている鎖骨が見え、男の人の色気が漂っていた。

(何よこの人……色気ダダ漏れ……。忘れてたよこの人って女癖悪いじゃない!私大丈夫?泊まるなんて簡単に聞いて。自分から誘ったみたいじゃない……どうしよう!!)

「あっ、あたしも入ってくるね!あっ、ビールにする?水のほうがいい?」
莉乃はかなり焦っている自分を悟られないように、キッチンに向かうと隠れるように冷蔵庫を開けた。

「せっかくだし、もう少し飲んでいい?」

「もちろん。せっかくの休日前だし飲んで飲んで!」
莉乃は自分の動揺をごまかすように、明るく言うと、グラスと缶ビール、チーズなどの簡単なつまみを用意しながら息を整えた。


「適当に、テレビでもなんでも見ててね」
そして誠の前にトレイを置くと、慌ててバスルームへ向かうために踵を返した。

「莉乃」
不意に呼び止められてドキンと胸が跳ねた自分に気づきながらも、莉乃はゆっくりと振り返り誠を見た。

「ありがとな」
柔らかく、リラックスをした表情で言われた誠の言葉に、また早く打ち始めた胸の音が大きく耳に響くのを感じながら、莉乃はなんとか頷くとリビングルームを後にした。


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