副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
2人は本屋に行くと、莉乃は現代小説と雑誌を、誠は経済雑誌を数冊購入した。
そして近所のカフェでサンドイッチとコーヒーをテイクアウトすると、公園に戻りゆっくりとランチをした。

「今週、毎日一緒だね」
ページをめくりながら言った莉乃の言葉を、誠も考えた。

(本当だ。仕事も休日も一緒にいるな)

莉乃に言われて初めてその事実に気が付いたほど、誠にとって莉乃の存在が自然だった。

思った以上に趣味も、時間の使い方も莉乃と誠は似ていて、一緒にいても無理をすることも、自分をつくる必要もなかった。

莉乃はただ思った事実を述べただけのようで、すでに雑誌の内容を真剣に読みふけっていた。

「ねえ、これ見て?いいよね」
「ん?」
ぼんやりと莉乃の事を考えていた誠は、莉乃の声にハッとして莉乃の指さす方に視線を向けた。
「淡路島と小豆島。海にオリーブオイルに渦潮。行ってみたいな」

莉乃が指さす先には、鮮やかなコバルトブルーの海と、緑の丘で回る風車。
そして観光船に、渦の巻いた海。

誠もそのページを目で追うと、
「へえ、オリーブオイルが自分で作れたりするんだ」

「うん、搾りたてのオイルにパンをつけたらおいしいだろうな」
幸せそうな顔で写真を見る莉乃に、誠もつい言葉が零れ落ちた。
「美味いだろうな。いつか一緒に行きたいな」

(おい!今一緒に行きたいって言ったか?俺?)

「……そうだね」

なんとか言ってしまった言葉を言い訳しようと、頭を巡らせていた誠に、少しはにかんだような笑顔で肯定の返事をした莉乃を驚いて誠は見つめた。

そんな誠の表情を見て、
「なに?冗談だった??」

少し拗ねたように言って笑った莉乃に、誠は「いや……いつかいけたらいいな」そう答えると、莉乃は誠に笑顔を向けた。


しばらく穏やかな時間が過ぎ、誠がコーヒーを口に運びチラリと莉乃を見ると、莉乃は木々の緑を見ていた。

「莉乃。どうした?」
「うん?なんか幸せな時間だなって。本当に久しぶり」

(久しぶり……こんな当たり前の事ができなかったのか……)

誠はそんな莉乃の頭に手を回してポンと頭を叩くと、

「会社にいる時も俺がいるから。これからは無理をするなよ。何かあれば絶対に俺に言え。いいな」

莉乃は安堵の表情を浮かべて「ありがとう」そう答えるとまたぼんやりと景色を眺めた。

誠は置いていた手で頭を優しく撫でると、そのまま肩まで下ろし肩を抱き寄せた。


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