名無し。

「佐藤君って、チャラ男なだけじゃないんだ

ね。」

きっと、下手くそだろう。下手くそだろうけ

ど、佐藤君に向かって思いっきり笑って見せ

た。

案の定、佐藤君の眉間には少しだけ、シワが

よる。

不機嫌そうにあたしを睨み付ける佐藤君。

「言いたいことって言ってもな…そーゆーの

じゃないんだけど?お前、アホか。」

「あははっ」

佐藤君は知らない。

あたしが佐藤君の優しさに気づいたの。

佐藤君は知らない。

あたしが佐藤君の言葉にどれだけ感謝して

るか。

佐藤君は知らない。

あたしも知らない。

制服の理由。

あたし達は、なにも"知らなかった。"



それから佐藤君とはわかれて家に帰った。

自分の部屋に行き、日記を開く。

いつの間にか日課になっていたこの流れ。

帰ってきたら一番に日記を書く。

開いた日記をパラパラめくりながら今日の

出来事を振り替える。

そして思い出す。

あたし、本当にタイムリープしたのかな?

日記に何か書いてあるんじゃないかな?

ここ1週間の日記を見てみる。

…なに、これ。

そこにはぎっしりと書かれた日記。

そしてその内容はあたしの知らないはずの

出来事。

あたしじゃないけど、これは紛れもなくあ

たしが書いたものだ。

この字。このイラスト。この間。

全部があたしのものだった。

あたしの中にはない、消えた1週間の日記

の内容は。

全く意味不明なものばかりだった。

そして、数ヶ所。

涙の跡だろう。

滲んで読めなくなってしまっている字。

あたし、何か忘れてるの?

でも、本当に何も知らない。覚えていない



胸が騒ぐ。

分かんないよ。

何を伝えたいの?何が言いたいの?

手紙は何かを伝えるために書かれたのだろ

う。

だけど、あたしには分からなかった。

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