僕と家族と逃げ込み家
簡単に言うが、娘を溺愛する逢沢さんの気持を考えたら、不合格などという不名誉……味合わせる訳にはいかない。やっぱりリスクは小さい方がいい。

そう言うと美山が、「違うよ」と大きく頭を振る。

「春君がリスクと思っているものは、恵ちゃんのものじゃないよ」

第三者だからか、美山には全体が見えているようだ。
繊細なコイツの視点は、いつも思うが……見習うべきところが多々ある。

「そうだな。結果の良し悪しは受け手の感じ方だしな」

美山に同意してゴクゴクと濃厚渋茶を飲みながら笹口が話を続ける。

「悪い結果だとしても、本人がスッキリしていたら良い結果だし、逆に、良い結果でも本人が納得していなかったら、それは悪い結果なんだろうしな」

なら、本人が望まない合格圏内の学校を勧めて合格しても、恵には悪い結果ということか……。

「逢沢さんなら、どんな結果になっても分かってくれるんじゃない?」

美山も笹口も自身が複雑な事情を抱えながらも、それでも懸命に生きているからか、物事の本質を良く見て発言する。

本当に良くできた二人だ。
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