僕と家族と逃げ込み家
「ピンクの氷水になっちゃったな」
白いテーブルにポツンと置かれたカップ。
グスンと鼻を啜り、手の甲で涙を拭った亮がそれに目を向ける。
こんな時、美山なら真っ白なハンカチを差し出すんだろが、生憎、僕はハンカチもティッシュも持っていない。
まぁ、亮だって僕にそんなことは期待していないだろう。
「なぁ、亮、いろいろ我慢するな。大人でも我慢するのが辛いときがある。ましてお前は子どもだ、我慢を溜め込むと身体に悪いぞ」
自分でも結構イイこと言っているな、と思っているのに、亮は聞いているのかいないのか、氷水をゴクゴク飲み始める。
「おい、止めろ。もう不味いだろ?」
「ううん、いっぱい泣いて、喉がカラカラだから」
「そっか、お茶でも買ってくるか?」
ううん、と首を横に振る。
やっぱりな、と思う。疑問形はダメだ。
「先生、僕の母さんのこと聞いた?」
突然、亮が母親の話を始める。
「ああ、うん……詳しくは知らないけどな」
「そっかぁ」
そう言って、亮は今日も雲一つない青い空を見上げる。