【紫・長編】華押(hana oshi)
「Dragon story」の作者は中年の女性だ。
「はてしない物語」の映画と小説に魅せられ、自分も西洋ファンタジーを創りだしたのだ。

夏冬は彼女の作品から「いつもの曰く付き」な匂いを感じ、まずは作品展ではなく彼女らをお祓いしようと思った。

「コンテ・パステル美術館」の応接室で夏冬と画家とが打合せだ。年期ものの応接椅子をキシキシ言わせながら夏冬が問う。
「愛してます。シャラム・クーンを」と画家はつづける。色恋沙汰にうとい夏冬は「貴方自身を?」と問い、ええと続けられ、ドン引きする。そこにカモミールのカップを三つお盆に載せた春秋が「素敵な男性なんでしょうね?」と会話に割り込む。

「でも砂漠の女は嫌い。リルのシャラムなのに」と画家が興奮する。
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