チョコレート・ウォーズ
この駅からだと、杏奈の家と幸弘の家は反対方向のため、電車に一緒に乗ることはない。

「うん。またね」

ヒラヒラと手を振って反対のホームへ向かう幸弘の背中を、杏奈はしばらく見つめていた。

『ま、うまくいかないってことはないだろうけど』

小さくつぶやかれたその言葉。

もしかすると報われることのない恋をしているであろう幸弘を思い、杏奈はこぼれそうになる気持ちを押し殺す。
彼は、私と一緒だ。

好き、と実感したときには、間に合わない。

だって、視線の先には他の誰かがいる相手に、恋をしてしまったのだから。

親友には幸せになってもらいたい。だけど、それは彼の失恋を意味する。

複雑な気持ちを抱え、杏奈はホームへやってきた電車へ乗り込んだ。


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