【連載長編】アルエス
『あんた、名前は?』


私の問い掛けに目の前の男は何も答えなかった。


ただ、じっと私を見ている。


怒りも悲しみも喜びさえ…人間が持ち合わせる全ての感情を喪失した、人形の瞳で私を見つめる。


人工生命体である…私の擬似魂(フェイク ソウル)すら凌ぐ、無心な眼差しに、私は任務の失敗を懸念し始めた。


ここに収容されていたのは眼前に座す、大男だけだった。


囚われの身ながら、鍛え上げられた肉体から本物の戦士の匂いがした。


魔磁伽琉使いばかりが脚光を浴びる世の中であっても、この男のような戦士の存在も必要不可欠である。


遺伝的に絶対数の少ない魔磁伽琉使いを量産するために創られた自分が、断言するのだから真実は間違いなくそこにある。


戦士は鍛えれば強くなる…もっとも単純な解答。


長い沈黙に私の方が根負けしたようだ
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