闇喰いに魔法のキス《番外編》
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「こちら、メニューになります。
お決まりになりましたら、お呼びください」
ロディと出会って半年。
私たちはちょうどお店で顔を合わせた時は、必ず相席するようになっていた。
私は、お店に入るとつい、無意識にロディの姿を探し、来ていないと少し残念な気持ちになった。
…今日も、私たちは“相席”をしている。
お互いのことは、話をするうちによく知るようになった。
だけど、未だに連絡先は知らない。
「…私たちって、どういう関係なの?」
「んー…“飲み仲間”だな。…今のところは」
“今のところは”、というセリフに、深い意味が込められているかもしれない、なんて淡い期待はしない。
私はどうやら、この男に惹かれ始めているらしい。
ロディの方も、自分のことをよく話し、私に興味があると言ってはいるけど…
実際、どう思っているんだろう。
ロディは、メニューを見ながら私に言った。
「たまには、“特別メニュー”以外のも食べたらどうだ?
一番お得だとはいえ、ドリアやパスタも美味いぞ。」
「そうね…。
じゃあ、この前ロディが食べてたハンバーグにする。一口もらって美味しかったから」
「おー、やっぱり肉か。」
ロディは、小さく微笑んでそう言った。
…可愛いのを食べればいいんだろうか。
肉ばかり食べてお酒を飲む女って、どうなんだろう。
お互い、お酒に強いということが分かり、度々飲むようにもなったけど…
それは女として間違った選択だったのかな。
悶々と考えていると、ふいにロディが私の名を呼んだ。
「ミラ。」
「なに?」
ロディは、メニューに視線を落としながら言葉を続けた。
「今日は、ノンアルコールにしてくれないか
俺も酒は飲まないから。」
「え?うん、分かった。」
私は、ロディの言葉に一瞬戸惑ったが、すぐに頷いて、呼び寄せた店員にノンアルコールとハンバーグを頼んだ。
…なんでだろう?
お酒を飲まないなんて、珍しい。
心境の変化でもあったのかしら。
ノンアルコールが少量のアルコール入りだとはいえ、私にとっては酔わない量。
それは、ロディにも言えることだ。
ロディを観察してみるが、特に変わった様子はない。
…?
その後は、お互いいつもと変わりなく他愛のない話をして、食事を終えた。
なんだ、いつものロディだ。
変に身構える必要なかったな。
私はそんなことを思ったが、ロディの違和感の正体が分かったのは
会計を済ませ店を出た後のことだった。
「ミラ。」
いつもは店を出たらすぐに別れるが
その日、彼は私を呼び止めた。
「?どうしたの?」
私がロディを見上げると
彼はさらり、と私に言った。
「この後、まだ時間は平気か?」
「え?」
ふいに胸が鳴った時
ロディは私をまっすぐ見つめて言葉を続けた。
「ミラがいいなら、飲みなおさないか?
…俺の家で。」
…!
どくん。
全身の体温が上昇した。
それは、他愛のない話しかしてこなかったロディが、初めてその先に踏み込んだセリフだった。
私の心の中で、嬉しさと戸惑いが混じり合う
…だから食事の前、あんなことを言ったの…?