ライ【完】
ジャンッ―――

ライは弾き終わると

私の方に顔を恐る恐る向けた。

「どう…だった?」

「え?凄く上手だった!!ライ、プロになれるんじゃない?目指そうよ!」

そんな彼に

私は思ったことをそのまま口にした。

「ありがとう。」

そう言うとフワリと笑ったライ。

――何かとそっくりだった。

「いやぁでも懐かしいな~」

私の言葉に不思議そうな顔をするライ。

「曲が?」

「曲もそうだけどね。」

私は続けた。

「ライ見てたらね、高校生の時のこと思い出したの。」

「そうなの?」

「うん。高校生の時にね、ライみたいにめちゃくちゃ綺麗な声で歌う男の子がいたの。」

そう言うとライは

「へー、どんな子?」

と質問を返してきた。

「えっとね、ライみたいにギターバカ、音楽バカでね、授業中もずーっと音楽のこと考えてるの。どうやったら自分の音楽が人に届くのかなーって。その事ばかりノートに書いてるからテスト前は私のノートコピーしてたなぁ。」

「へー、そうなんだ。」

あとは…そうそう。

「あとね、二重瞼がとっても綺麗な形してるの。」

そう言ってライの方を見て

「そういえば…」

とライの少し長い前髪を私の手で横に流した。

「ライも凄く綺麗な二重の形してるよね。」

「バッ……バカやめろよ!」

そう言って私の手を払ったライ。

そっぽを向いてしまった。

しまった。怒らせたかもしれない。

「ごめん、嫌だった?」

私が謝ると

「…嫌じゃないけど…」

と小さな声で言ったライ。

「嫌じゃないけど…何?」

「何でもねーよ!」

やっぱりライ、怒ってるじゃん。

私はライが何を思っているのか分からなかった。
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