ライ【完】
愛しい貴方へ
拝啓 愛しい貴方へ

月日が経つのはとても早いものですね。

気がついたら私は

時間の止まった貴方の

約5倍、年をとってしまいました。

貴方は向こうの世界で元気に過ごしていますか。

私は、貴方とお別れした後、

大学の先輩とバンドを組んで

プロを目指しました。

でも、やはり荊の道。

プロになることは出来ませんでした。

プロになることを諦めたその後、

バンド活動の拠点となるような
 
小さなロックカフェを開いて私は生計をたて、

夢を叶えることはできなかったけれど

それでも、充実した人生を

送ることができました。

その後、大学の先輩と結婚し

今は孫が4人いて

毎日わいわい楽しく過ごしています。

そのうちの1人の男の子が

ピアニストになろうと

頑張っていて、

親の反対を押しきってまで

なろうとする姿に

何故か貴方に似てるなぁと感じてしまいました。

もちろん、私はその子の味方ですよ。

数年前、主人が先に旅立ってしまい、

私は寂しいです。

きっと貴方は不思議に思っているでしょう。

何故このような手紙を書いているのかと。

―――手紙を書いている理由はただ1つ。

貴方に会いたいからです。

私はもう待ちくたびれてしまいました。

早く貴方に会いたいのですが――――






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