イケメン小説家は世を忍ぶ
言ってしまった言葉は取り消せないのに、動揺しながら慌てて手で口を押さえる。

バカ!プライベートを公表しない桜井先生に何聞いてるのよ。

「想像に任せる」

桜井先生はどこか謎目いた微笑を浮かべた。

どうやら怒ってはいないらしい。

とりあえず咎められなくてホッとする。

桜を見て機嫌がいいのかもしれない。

口に当てていた手を離したその時、風が吹いて桜の花びらがヒラヒラと舞い落ちた。

「うわあー、綺麗」

目を輝かせながら花びらが落ちる様子を眺めていると、突然桜井先生の顔が迫ってきた。

な、な、何?

激しくうろたえながら桜井先生を見ると、彼はフッと微笑しながら手を伸ばし私の頭に触れた。

トクンと跳ねる私の心臓。

「花びらがついてた」

桜井先生が手の中の花びらを私に見せる。
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