イケメン小説家は世を忍ぶ
なんだ、花びらがついてたから取っただけか。

迫られたのかと思って勘違いしてしまった自分が馬鹿みたい。

桜井先生もそんな私の動揺を知ってか、ニヤリとしながら私を見る。

この人は……自分の魅力を熟知してるに違いない。

こんな美形の顔が迫ってきたら誰だってドキドキするはず……。

花びらを見ながら誤魔化すようにハハッと苦笑いしたその刹那、私のお腹がギュルルーっと鳴った。

桜井先生も私も互いに数秒沈黙。

大きな音だったし、誤魔化せない。

あ~、何でこんな時に鳴るの、私のお腹!

気まずくなってお腹を押さえながらうつ向くと、先生がハハッと声を上げて笑い出した。

「興醒めなやつ。お嬢ちゃんは花より団子らしいな」

「これは……お昼から何も食べていないせいです!」

真っ赤になって弁解するが、桜井先生の笑いは止まらなくて……。

あ~、その口をガムテープで塞いでやりたい。

桜井先生をジト目で見ながら私は心の中で呟いた。
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