イケメン小説家は世を忍ぶ

ソメイヨシノのうすいピンクの花も好きだけど、垂れ桜のピンクの花も色鮮やかで私は気に入っている。

垂れ桜が庭にあるなんて優雅だなあ。

桜の花びらに誘われるように垂れ桜の木の下まで行って、じっと美しい花を眺める。

ここでレジャーシート敷いて、お弁当食べたらどんなに素敵だろう。

お弁当でなくても三色団子でもいいな。

人の庭でそんな妄想に耽ってしまうのは、現実逃避したいからだろうか？

でも、そろそろ現実に戻らないとあの嫌味な男に文句を言われそうだ。

さっきまで草をむしっていた場所に戻ろうとしたら、桜井先生に「動くな！」って怒鳴られた。

「え？」

訳がわからず首を傾げながら桜井先生見ると、彼はスケッチブックとペンを持っていて何やら絵を描いていた。