イケメン小説家は世を忍ぶ
「何か問題が?」

桜井先生の眼光に怯んで出かかった言葉を飲み込むが、彼の右手の火傷のことを思い出し、好奇心に負けて聞いてみる。

「いいえ、何でもありませんが……ひょっとしてその猫が原因で右手を火傷したんじゃあ?」

「そうだが、こいつに怪我がなくて良かった」

愛おしげに言って、桜井先生は猫を抱き上げる。

その蕩けるような笑顔にドキッとした。

この人……こんな風にも笑えるんだ。

いつも人を馬鹿にしたような笑顔しか見せないから、嫌な男だって思ってた。

そして、改めて思う。

先生は猫にだって優しいのに、私には意地悪だ。

「桜井先生、可愛い猫との触れ合い中すみません。今、口述タイプの必要がなければ、進行状況の報告のため一度会社に戻りたいのですが宜しいでしょうか?」

笑顔を貼り付け桜井先生に尋ねる。
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