俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
「……っ!」
俺は1人で家を飛び出していた。
「良ちゃん!」
後ろからアリサの声が聞こえたが、
雨が降っているせいで、アスファルトにしずくが落ちる音と、水たまりを踏む自分の足音にかきけされた。
一粒一粒が大きい。もちろん傘は持っていない。
顔に当たる雨が、痛くて、冷たくて、このまま俺を撃ち抜いてくれたらいいのにと思った。
親父が死んだときは、母も祖母も俺に隠れずにボロ泣きしていたのに。
さっきの通夜でも、すすり泣く声がたくさん聞こえたのに。
俺だけが、まだ、泣いていなかった。泣けなかった。
たった1人の息子のはずなのに。
自分でも自分のことがよく分からない。