俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
「ごちそうさまでした。おごってもらってすんません」
「いいよいいよー。その代わりまたご飯付き合って。あ、今度どっか遊びにも行かない?」
「え……?」
突然のデートの誘いに俺はビビっていた。
――何だ? このまた都合のよすぎる展開は!
いや、これは一世一代のチャンスかもしれない。
エナさんは、ほかのバイトたちよりも俺にかまってくれている。
彼氏と別れたばかりって言ってたし。
もしかして俺、ロックオンされてる? やべぇ。スーパーウェルカムっすよ! 良一のここ、空いてますよー!
「はい……俺なんかでよければ」
脳内とは真逆のテンションで俺は返事をした。
すると、
「…………うん。ありがとう」
とエナさんはつぶやき、俺から視線をそらした。
ふっと、その表情から笑顔が消えた。
俺と一緒にいる間ずっと笑っていたから、
その一瞬が、俺の心を揺らした。
「どうしたんですか?」
「……実は、柳井くんって死んだ弟にそっくりなんだ」
「…………」
「あはは、何でもない。じゃあまたねー!」
手をぶんぶん振りながら、エナさんは人ごみの中へと消えていった。