俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
「なんかいっつも上手くいかないんだよねー。男って本当意味わかんない」
駅前のファミレスで、俺はエナさんから男関係のグチを聞かされていた。
エナさんは隣町に住んでいる短大生。
高校生の頃からあのカフェで働いているため、職場ではベテランらしい。
「ねー柳井くんは彼女いるの?」
「いないっす」
「へぇ~フリーなんだ。今まで何人くらいと付き合ったの?」
「いたことないっす」
「うっそ! 絶対モテるでしょ? 柳井くんみたいな人ってしれっと中学の頃から彼女作ってるタイプじゃん」
いーや、そう言われてましても……。
まあ、俺の友達はなんだかんだ言って彼女持ちが多い。
俺だけいない。なぜだ?
モテないわけではない、はず、なのに。
これまでの恋愛チャンスを振り返っていた時、
エナさんはさらりと大声でこう言って笑った。
「だって私のおっぱいにダイブしても全然動じてなかったじゃん」
ブーッ!
飲んだ水を吹き出しそうになる。
うぉい! 家族連れもいる店内で、そんなこと大声で言うな!
「や、あれは……。てかあの時はすみませんでした! 本当はめちゃくちゃビビってました!」
「うっそー。全然そうは見えなかったよ。でさー聞いてよーこの前さー」
無駄に心臓がどきどきしている。
エナさんはそんな俺に構わず楽しそうに話している。
これか? これが大人の余裕ってやつか?
俺も平静をよそおって、相槌を打ち続けた。