俺に彼女ができないのはお前のせいだ!


いつの間にか、あたしの視線は鋭くなっていたらしい。



「こわっ。何で俺、にらまれてんの?」


「にらんでないよ。普通だよ。ひっど。良ちゃんの方が目つき悪いくせに」



悔しさのあまり、憎まれ口をたたくことしかできない。



怒らせちゃったかな、と思いきや。


ぎゅっと椅子の音を鳴らし、良ちゃんは立ち上がった。



なぜか笑いをこらえているような顔で。



「お前、わけわかんねー。さっきの男といた時と全然態度違うじゃん」



良ちゃんは嫌味っぽくそう言いながら、あたしの隣に座ってきた。



ベッドがきしむ音とともに、体が揺れる。


近づいてきてくれる度、心も揺さぶられる。




数年前、泣きながらこの家を出ていった女子や、


バイト先のせくしーなお姉さん。


他にも、良ちゃんに近づく女の子はいたのだと思う。



なのに結局彼女はいない。



何度か聞いてみたこの言葉を、あえて今、口にしてみた。



「ねぇ、良ちゃんは、彼女ほしくないの?」って。



< 203 / 269 >

この作品をシェア

pagetop