俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
気がつくと、部屋の中は真っ暗になっていた。
扉越しにいい匂いが漂ってきている。今日は煮魚か。
「ん……」
左側によった寝ぐせを押さえつけながら、ふと窓の外を見る。
アリサの家には何の光も灯っていなかった。
彼女の部屋も、街灯に照らされ、
暗闇にほんのりとカーテンのピンク色が浮き上がっているだけ。
「良一! いるのー?」
扉越しに母の声が聞こえ、ヘッドホンを取った。
「いるけど。何?」
「マヨネーズ買い忘れちゃって。コンビニ行ってきてくれない?」
「わかった」
母からのパシリ依頼を受けることにしたため、俺は1階に降りて玄関に向かった。
「…………」
スニーカーを履きドアを開けようとした瞬間、
全身が固まった。
扉一枚へだてた先、
かすかに男女の話し声が聞こえてきたから。