夢の中で君を描く
裏庭に着くと、何時もの校舎につながるコンクリートの所に二人分の鞄を置き、その隣に座った。
蒼井さんも、何時もの定位置に座る。
脚をクロスした三角座りで、体を木に預けた。
俺は鞄からスケッチブックと鉛筆、消しゴムを取り出して花を描く態勢に入る。
真っ白のページに少しずつ線を足していくが、直ぐにその手を止めた。
「そんな見られると描きにくい。」
「暇なんだよ。」
顔を膝の上に乗っけて、少し唇を尖らせる。
「今日は寝んの?」
「さっき寝た。」
だから眠くないって、指の腹で足元の草を優しく撫でる。
じゃあなんで来たんだよ。
帰ればいいだろ。
って思ったけど、言葉に出せなかった。
拗ねた様に草をいじり出すから、
「絵、描く?」
って言った。
そしたら一瞬考える様に目線を逸らして頷いた。
鉛筆と消しゴム、スケッチブックの真っ白なページを1枚、下敷きを渡す。
「今何描いてる?」
「この花。」
目の前の花を指差す。
「分かった。」
恐らく、俺と同じ花を描いてるんだろう。
蒼井さんは黙々と描いていて、凄く真剣だった。
俺も、見習って黙々と描く。
お互いの鉛筆の音がよく聞こえた。