夢みるHappy marriage


それでも未だに意識がはっきりしない榊原さんに、西條さんの苛立ちが募って強引にワイシャツを着させられる。
そして、ぐでんと脱力しきった彼の腕を掴んで立ち上がらせると、バスルームへ無理矢理連行した。

扉が閉まると、更なる西篠さんの罵声が聞こえてきた。そこから戻ってきた社長様は顔を洗うと少しはエンジンがかかってきたのか黙々と自分で着替え始めた。


「これ、社長から頼まれていた着替えです」

そう言って、私にも紙袋が渡された。そこに入っていたのはブランドものの全身フルコーデ。
……これ、一体総額おいくら?


「こんな、申し訳ないです。あのクリーニングに出してもらった自分の服返ってきているので大丈夫です」

「社長が勝手に世話を焼いてるだけなので気にしないでください」

そう言われ、無言の圧力をかけられ渋々受け取ることに。

……思わずため息が出る程の美人って、こういう人のことを言うんだろう。
女の私がうっとりしちゃう位綺麗な人。

鼻筋がすっと細く高くて、まるで品の良い彫刻のような顔の造り。
目も切れ長で、唇の形も綺麗。

それに加えてこの文句のつけようがない抜群のスタイル。
身長170cm位はありそう。顔も小さくて一体何頭身なんだろう。

液晶パッドを片手に、榊原さんが着替えるのを待っている。
今日のスケジュールでも確認しているのだろうか。


私も着替えようとバスルームへ行く途中、さり気なく遠目で彼女を見た。


……その時計、そのバッグ、そのネックレス、全部知ってる。
私がいつもウインドウショッピングで眺めている先にある憧れの代物達。

だけど、もし私が身に着けてたとしても、不相応なそれらは悪目立ちしてしまう。
なのに、彼女は、まるでそこにあるのが当然とでもいうように違和感なく似合っている。

生まれながらにスタイルが良くて肌質も良い、天性の美人。

男に媚びた化粧と髪型と服装で、最大限誤魔化した自分が恥ずかしくなってくる。

私には一生手に入れることのできない全てが彼女には備わっているのだ。


……こんな人と四六時中一緒にいるんだから、周りの女なんてじゃりんこ位にしか見えないだろう。


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