ウェスター国戦師(いくさし)の書。2~優しい後悔~
モモが、いいの?と言うから、頷いてそのページを開いてノートを渡してやる。


彼女はその文面に目を落とした途端、自分と同じリアクションをした。


「……嘘……これ、日付が今日じゃない!」


「……リンに聞いたら、母さんゆうべはちょっとしんどいからって。

早めに寝たんだってさ。

で、今朝になったらもの凄く清々しい顔してたんだと。

『元気になってよかった』ってリンが言ったら、『一仕事終えた気分』って。

そう答えたらしいぜ」


「一仕事……?」


「読んでみな。

分かるから」


彼女が、母さんの最後の日記の文面を目でたどっていく。



*****


4月2日



ありがとう、母さんはとても嬉しいです。


貴方を夢で見る時、いつも貴方はそっぽを向いていたのに。


昨晩見た夢では、貴方は初めて目をあわせてくれた。


ぎこちなかったけど笑ってくれた。


許されることはないと思ってきた、だけど……シンラ、貴方と顔を合わせた途端、ダイさんを思い出してしまいました。


もしも許してもらえるなら……なんてそんなことを考えました。


こんな図々しい母さんで、ごめんなさいね。


本当に、もしも許してもらえるなら……聞いて欲しいことがあります。


今までずっと胸の奥にしまっていた事実。


リンに話すことも、書き記すことも出来なかったこと……シンラ、貴方にはやはり話しておきたい。……



*****


「多分……朝イチで、起きてすぐ書いたんだろ。

なんか予感みたいなのが、あったのかもしれねえな。

今、書いとかなきゃいけない、みたいな」


「……ダイさん……って、シンラのお父さん?」


「ん。

父さんがダイスケで、母さんがタクミ」


「……事実って……?」


「……俺の目の前、真っ白にしたくらいのな。

衝撃だったよ」


モモが日記の続きに目を落とす。


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