離婚、しませんか?
この腕からすり抜けて行く小鳥を、逃がしはしない(side 光)
もう少し。
あと少し。


閑静な住宅街の一角に建つ、見慣れた外観のその家の中から漏れる明かりを目にした瞬間、抑え難い愉悦に口元がゆるゆると弧を描いてゆく。


ああ……待ち切れない。


早足で玄関へと辿り着き、インターホンを鳴らすが応答はない。
もしかして、オレを待ってくれている内にソファでうたた寝してしまったのかもしれない。

ソファ、という単語にますます上がる口角のせいでだらしなく緩む顔がニヤけてしまうのは不可抗力だ。
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