冗談はどこまで許される?
冗談はどこまで許される?
幼馴染の家に走った。

去年のエイプリルフール、ポストに切手の貼っていない手紙が届いた。
その手紙を信じた私は家の近くの公園で1時間待ちぼうけをくらった。
待ち合わせ時間から1時間経った頃、幼馴染が驚いた顔で、
「お前まだ待ってたのか!? あんなの冗談だってすぐにわかっただろ?」
なんて言った。
『好きです。 4時に○○公園で待っています。』
とだけ書かれた手紙。
自分の名前も、私のどこが好きなのかも書かれていない手紙は、冗談や悪戯だと判断する方が正しいのかもしれない。
だけど、私は知っていたんだ。
その筆跡が幼馴染の彼のものであると・・・。
だから、彼が公園に顔を出した時、何かあって約束の時間より遅れたのかな? 手紙の差出人はやっぱり彼だったんだ。とすごく嬉しかったのに・・・。
その時 私は、
「冗談か・・・まぁそうだよね」
と苦笑するしかなかった。
「まさか、告白してきた相手と付き合おうと思ってた?」
彼は私をバカにした様な表情ではなく、本当に驚いている表情だった。
だから、私は彼を嫌いになれないんだ。
彼がもしも心から私を蔑んでいるなら、きっと最低な男。と思えた。
だけど、彼はほんの少し私をからかってやろうと思っただけなんだと思う。
結局、彼からしたら私は小さい時から傍にいた幼馴染でしかない。
それは、男とか女とか関係ない。
「・・・付き合おうと思ってたよ?」
私は清々しい気持ちで彼に告げた。
彼からの告白だったのなら、私は頷くつもりだった。
「え・・・マジで?」
「うん」
「でも・・・相手誰だか分ってなかったんだろ?」
彼はさらに驚いた表情。
彼は私が彼の筆跡を分からないと思っているんだな~と思った。
「はははっ そんなに驚かなくてもいいでしょ? じゃあね。 また明日~」
私は彼に背を向けた。
バイバイ。 私の長かった初恋。


それから1年経って、今年は私が彼に冗談をしかけてやるんだ!と張り切っている。
彼の家にいつもの様に挨拶しながら上がって、当たり前の様に彼の部屋のドアを開ける。
「うわっ ビックリした。 ノックくらいしろよ」
慌てている彼に私は勢いのままに告げる。
「好きです。 付き合ってください」
彼は、それ以上開かないでしょ!?という程、目を見開いている。
彼はきっと『エイプリルフールだもんな。 騙されないからな』と余裕で答えると思っていた。
なのに・・・。
手を引かれて、ふらりと倒れかかった私を腕の中に閉じ込めた彼は、そのまま私の顎を持って上に向かせると私の唇に自分の唇を重ねた。
驚きすぎた私は目を見開く。 瞼を閉じている彼の顔が目の前に・・・。
何!? なんでこんな事に!?

唇を離した彼は少し頬を染め、
「俺も好きだ」
と言った。
え? 冗談? 今日がエイプリルフールだから?
エイプリルフールの冗談でここまでしてもいいもの!?
私、ファーストキスなんだけど!?
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