*Only Princess*




「……わかった。その話受けるよ。白鷹には今度話をつけるから、少しだけ待ってて……」


「本当か? 受けてくれるのか?」



ゆっくり噛み締めるように頷くと、ふっと嬉しそうに微笑んだタカト。


あたしはそれを見て、微笑み返せなかった。



「……じゃ、あたし戻るね。ケガ、本当にごめんね……」



そっとタカトの足に触れたあと、あたしは病室を跡にした。


早く離れたくて、バッと駆け出して自分のいた病室に戻った。


駆け込むとお母さんがいた。



「あら、戻ってきたのね。……って、どうしたの? ひどい顔してるけど……」



心配するお母さんの横を通り過ぎ、あたしはベッドの中に潜り込んで、すっぽり顔まで隠した。



「……なんでもないっ。お願い、今は1人にして……」


「菜生……?……わかったわ、外にいるから、何かあったらすぐに呼ぶのよ?」



本当は何があったのか聞きたいのだろう。


でもそっとしておいたほうがいいと思ったのか、素直に病室を出ていった。



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