*Only Princess*
あっという間に昇降口に着いた。
すると菜生が入ってくるのが見えた。
額と膝に絆創膏を貼っているのに気づいて、俺は顔を歪めた。
「菜生っ……!」
名前を呼ぶと、ハッとしたように反応して目が合った。
俺の姿を見た菜生は、唇を固く結び、何かを堪えているようだった。
その目は潤んでいる。
俺は思わず菜生に駆け寄り、ぎゅっと抱き締めた。
菜生も俺にしがみつく。
なんだかいつもより菜生が小さく思えた。
「……怖い思いしたよな。1人にさせてごめん」
ふるふると首を横に振る菜生。
体を離し、顔を見るとその顔は涙で濡れていた。
「でも……無事でよかった」
「てった……っ」
涙がどんどん溢れてくる。
キリがなくても、俺はその涙を拭い続けた。