*Only Princess*




屋上に行くと、予想通り心配はしていたけど優しく菜生を迎えるみんなが待っていた。


事故のことを思い出させるようなことは言わずに、ただ「無事でよかった」とだけ。


それに菜生も気づいたのだろう。


少しだけ微笑んで、頷いていた。


でも菜生の笑顔はすぐに消える。


そして思いつめたように下を向いて、何かを迷っているようだった。


胸騒ぎがして、俺は何も聞けなかった。


決心をしたのか、菜生は顔を上げて俺ら1人1人と目を合わせた。




「みんなに……大事な話があるの」



菜生の表情からして、確実にいい話ではないだろう。


でも菜生が真剣に話そうとしているんだ。


俺らも真剣に受け止めないとな。



そう覚悟した瞬間、視線を少しズラして俺は気づいてしまった。


いつもは菜生のブレザーの左胸元についている鷹のピアス。


白鷹を象徴するピアスがついていないことに。



< 345 / 422 >

この作品をシェア

pagetop