彼女の涙の理由
〜変わっていく日常〜
~優太side~

彼女をとりあえずタクシーで家に帰らせて、僕は退院の手続きをしていた。
家に帰って彼女の看病。
まだ傷が開くと危ないから要注意だって言われた。
当たり前だ。元々僕の宝物に傷が入ったんだから。
余計大事にしなければならない。

僕の宝物。

でも好きになってはならない。
今日もバイトだ。
精一杯働いていこう!

「いらっしゃいませ!」

今日はクレーマーが少ないな。
ってことはバイトも暇だ。

「ねぇ~、優太くぅんて彼女いるのぉ?」

こういう女が一番嫌いだ。
馴れ馴れしいというか鬱陶しい。
大して可愛くないのに対して、お世辞で可愛いって言われると照れながらそんなことないよっていうんだ。
ぶりっ子っぽくて嫌いだ。

「ぇえ?関係ないじゃないっすか」

「教えてくれてもぉいぃじゃん?」

「いないっすよ」

「まじぃ?うち、彼女になっちゃおかなぁ~!」

「あはは…ちょっと無理っすかね。僕女の人苦手なんで。」

「ぇぇ?つまぁんなぁい!」

仕事仕事。
妹食わせるために働いてんのにケバい女と付き合ってられっか。

「あれ?優太くん?」

「え?友香。どうしたん?こんなとこで。」

「あ、たまたま買い物してたら優太くんに似てるなって思って。お仕事中?ごめんね!じゃあ、また今度会おう!」

「うん!じゃあ、連絡するよ!」

「うん!じゃあね!」

友香は昔からの友達。
女友達の中でも一番綺麗で話しやすい。
髪の毛はロング。頬はほんのりピンクで、唇はぷるんとしていて、口紅を派手に塗っていないから綺麗なピンク。
目もぱっちりしていて誰もが羨むほどの綺麗さ。

「ねぇ~。あぁいう子がタイプなのぉ?」

「そうっすよ?」

「…」

黙った。
当たり前だ。あの子じゃ勝てる人はほとんどいないだろう。

そしてあっという間に時間は過ぎていきタイムカードを押した。

「ただいまぁー!」

「あ、にいちゃん!おかえり!」

「傷口大丈夫か?」

「うん!平気よ!」

「無理するなよ?」

「わかっちょるって!」

また、そのはにかむような笑顔。
やめろよ。
好きになるだろう?

「なんで辞めなきゃいけんと?」

「え?どうした?僕何も言ってないよ?」

「あぁ、ごめん!独り言や!」

最近おかしい。
様子がどうも何かを隠しているようで、怖い。
僕が考えたことがまるでわかってしまうみたいに。

「そういう時だけ鋭いんやな。」

「本当にどうした?」

「あぁ、なんか癖になっちゃったみたいなんよ」

本当に癖なのか?
< 4 / 5 >

この作品をシェア

pagetop