すれ違う未来
私の漏らした驚きの声は不運にも彼の耳に届いてしまった。
「あ・・・久しぶり」
彼は苦笑した。

「それ・・・」
「え?」
「余計な御世話だけど・・・・それはやめた方がいいと思う」
私は俯いた。
「・・・そう」

私が彼の部屋へ持ち込んでいたほとんどの品がこのお店の物だった。
カバー類や雑貨、食器の果てまで。
そして、彼が今見ているお茶碗は、私が彼の部屋で使っていた物とよく似ていた。
少しデザインの変更があった様で、私と全く同じ物はもう売っていない。
彼の部屋に片割れだけが残されている。
彼はその片割れと揃いの物を探しているのだろうか?
・・・本当に無神経な人。
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