一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
「ご挨拶遅くなってしまい、申し訳ありません、落ち着いた状況でご挨拶を……と思いましたので」

そう言いながら女性がスーツのポケットから取り出したのは、ブランドものの名刺入れ。

そこから一枚取り、差し出された。

「初めまして。笹本真理愛と申します」

「ありがとうございます」


差し出された名刺を受け取り見ると、そこにはミナミ自動車本社、秘書課勤務とも書かれていた。

「ご覧の通り、副社長秘書として勤務しております」

「副社長秘書……ですか」

じゃあ彼女、笹本さんは南さんの秘書ってことだよね?

納得したのも束の間、笹本さんは話を続けた。


「水谷さんのことは存じ上げております。……颯馬から毎日のように散々聞かされているので」

「……え」


颯馬……? あれ、ちょっと待って。私の聞き間違い? 今、呼びすてで呼んだ? でも笹本さんは南さんの秘書なんだよね? それなのに呼びすてって……。


混乱する私に、笹本さんは表情を変えずに淡々とした口調で聞いてきた。
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