一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
思わずカメラが回っていないかと、周囲をキョロキョロと見回してしまう。

「ささ、堅苦しい挨拶はこのへんにして、今日はゆっくり食事を楽しみましょう」

そう言うと南会長はドア付近に立っていたウェイターに目で合図を送ると、すぐに料理が運ばれてきた。

それは盛り付けさえも芸術的で美味しそうな料理ばかり。

フレンチレストランと聞いていたから、それなりにテーブルマナーをお父さんと予習してきたけれど、実際に本物の料理を食するとなると緊張してしまう。

それでもなんとかお父さんとふたり、目配せしながら食べ進めていった。

もちろんその間も彼の視線を感じていたけれど、料理を前にしてはそれどころじゃない。

南会長の前での失態だけは、するわけにはいかないとお父さんと話していたから。


お見合いは当人同士……ではなく、父親同士の会話だけで進んでいく。

最初は緊張でガッチガチだったお父さんだけれど、南会長がとても気さくで話しやすいから、今ではすっかり打ち解けてうちで製造している部品について嬉しそうに説明している。
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