一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
「それより美弥、どうするつもりなんだ!?」


ひとり思いがけない事態を考える時間も与えてもらえず、後を追ってきたお父さんは私の隣に腰掛けると、再び詰め寄ってきた。

「帰りがけ、誘われてしまったじゃないか。……今度の日曜、デートに」

「私が答える間もなくお父さんがOKしちゃったから、行くはめになっちゃったからね」

ギロリと睨みを利かせ、声に棘を生やして言うと、やっとお父さんは口を閉じた。


そうなのだ、お父さんの言う通り実は帰りがけ、サラリと誘われてしまったのだ。

『今度の日曜日、どこかに出掛けない?』と。

おまけに名刺の裏にラインのIDを書いて、渡されてしまった。

さっきからずっと握りしめたままの名刺を見つめてしまう。


『詳しいこと、あとで連絡したいからここにミャーの連絡先、送ってくれる?』って渡されてしまったけれど……とうしよう、これ。


デートなんてとんでもない! なのにお父さんが勝手にOKしてしまうから、今さら行けないとは言いにくい。

そのくせ南さんが帰った途端、我に返り「どうするんだ?」なんて、こっちは大迷惑だ。
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