一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
自分の感情なのに信じられない。けれど、彼とキスしたいって本能に逆らえる術などないよ。

ジリジリと近づく彼の整った顔。

そのスピードの合わせるように瞼を閉じた。……んだけど。


「お願い、髪触らせてくれる?」

「…………へ」


小声で囁かれた瞬間、瞼を開けると、切願している彼と至近距離で視線がかち合った。

「え……髪、ですか?」

目をパチクリさせながらオウム返ししてしまった。


そもそもどうして髪? なぜこのタイミングで髪? どう考えたって今の雰囲気、髪じゃなくてキスでしょ!!


「お願いこの通り! もうずっとミャーのフワフワな髪が触りたくて」


なんなの? どうして髪なの!?

キスされると勝手に思い込んで目を閉じてしまった自分が、ものすごく恥ずかしいんですけど!

けれど彼はそれどころじゃないらしく、どうしても私の髪に触りたいようで、顔の前で両手を合わせてきた。
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