理想の人は明日から……
 私はお客様のお見送りが済んだが、ロビーに立ったまま、ぼーっとしていた。


「おい、南! 何ぼーっとしているんだ? 帰るぞ! 支度してこいよ」


部長の声に、顏を向けた。


「ああ、そっかぁ。着替えなきゃ」


 私は慌てて、控室へと向かった。




 控室には、案内役だった女子社員達の着替えを、美容師さん達が手伝ってくれ、スムーズに進んでいた。



「まさか、営業部長が社長の息子とは驚いたわよね?」


「さすが副社長、貫禄あったわね」

 女子社員の一人が言った。


「そうそう、カッコよかったぁ」

「でも、無理よ、婚約者がいるって噂だから」

「そうそう、田辺グループのご令嬢の噂があるわよね。今日も来ていたみたいだし」

「そりゃぁ、勝てないわ」


 私は、黙って女子社員達の話を聞いていた。



 部長がどんどん遠くなって行く気がした……

 
< 28 / 35 >

この作品をシェア

pagetop