俺様社長に飼われてます。
「まさかお前、ルージュも使ったことがないのか」
「……リップクリームなら、よく使いますよ?」
薬用のやつ。しかも無着色、無香料。
小さくそう言って私が乾いた笑い声を漏らせば、高山さんは眉をひそめて私の顔をじっと見つめてきた。
「……ご、ごめんなさい」
こんなにたくさんの女子力に溢れたものをプレゼントしてくれた人に対して多大な無礼を働いてしまったと今更ながら後悔と反省をしている。
私の内心の焦りとは裏腹に、高山さんはそれほど怒ってはいないようでいつもの仏頂面のままで私の手からくちべ……ルージュのスティックを奪い取った。
「口を開けろ」
そう言いながら、高山さんは慣れた手つきでスティックのキャップを外した。
きゅぽん、と小気味良い音が鳴る。
「は、はい」
「開けすぎ」
あーんと口を開くと、それがお気に召さなかったらしい高山さんが私の頬をガッと掴んだ。地味に痛い。
滑らかな動作で頬にあった手が顎へと伸びて、唇に冷たいものが押し当てられた。