俺様社長に飼われてます。
ぼんやりと、何も考えずに歩いていると人気の少ない公園へと辿り着いた。
人気がないのはもう夕日も沈みそうな時間帯だからだろうか。小学生なんかはとっくに帰宅している時間なのだろう。
そんなに長い間さ迷うように歩いていたとは思わず、風で小さく揺れるブランコを見て我に返った。
「……これから、どうしよう」
勢いで高山さんの話も聞かずに飛び出して来てしまったけれど、帰る場所なんてない。
そもそも見知らぬ人に車で連れ去られて高山さんに拾われたこの身。この辺りの地理なんて全く知らないし帰り方すらもわからない。
途方に暮れてぼんやり立っていると、肩を叩かれて慌てて振り向いた。
「お嬢ちゃん、一人?」
まさか高山さんがここまで追いかけてくれた――なんて奇跡、あるわけもなく。
振り向いた先に下品な笑みを浮かべたスーツの中年男性を目にして、私はうっ、と息を呑んだ。
「可愛いね、いくら?」
「は?」
そう言いながら懐から薄い長財布を取り出したおじさんに私はクエスチョンマークだらけだった。
「15(いちご)でいい?」
イチゴ、苺?何を言ってるのかわからずに眉をひそめて困惑していると、次第におじさんも似たような表情になっていった。
「あれ?神待ちじゃないの?」
「カミ……?」
先程からどうにも噛み合わない会話。
だけどこの人の態度や表情からなんとなくわかるけど、たぶん私は何か多大な勘違いをされているらしい。