国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「はい。これからあなたさまに会いに行こうとしていたところでした」

「話してみるがいい」

ちょうど会えた話を聞いたあと、ルチアのことを尋ねようと長老に頷く。

「島の娘が酷い熱を出しておりまして、まったく下がらないのです。なにも口に――」

「ルチアのことか!?」
 
ユリウスは老人の言葉をさえぎり、食い入るように聞く。

「は、はい。どうしてルチアの名前を……」

「彼女の家へ連れていけ」

「は、はい」
 
老人はなぜユリウスがルチアを知っているのかと、疑問に思いながら歩き始めた。

 

少し歩くと、小屋の前で炊いている火の前にいる老婆がいた。ルチアの祖母だ。離れていても鍋からひどい匂いが漂ってくる。
 
ユリウスと老人を気づくと、立ち上がる。

「アマンダ、アドリアーノ候をお連れした」

「アドリアーノさま、孫娘のために申し訳ありません」
 
ルチアの祖母は深くお辞儀をし、小屋の入り口の布を開けるとユリウスを招き入れる。
 
ユリウスの想像を上回る簡素な部屋の隅に驚いたが、表情には出さずルチアを探す。

すぐに布団から出ている淡いブロンドが目に入る。
 
こちらに背を向けて苦しそうな息遣いが聞こえた。

「ルチア!」

ユリウスはルチアのそばに膝をつくと、手を額に当てた。ルチアの額はひどく熱を持っていた。
 
意識が混濁しているようで反応がない。

「今朝は話も出来たのですが……」

 
その様子にジョシュは安心して出かけたのだ。

「すぐに医師に診せなければ」
 
ユリウスはルチアの身体に掛けられていた薄い布を彼女の身体に巻き付けて抱き上げた


< 46 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop