国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「さあ、横になってください」

 
そこでアローラに借りた服が洗えずそのままだったことを思い出す。

「借りた服をまだ返せずすみません……」

「服のことは気にせず、おやすみください」
 
アローラは部屋を出て行った。
 
ひとりになったルチアは目を閉じると、考える間もなく眠りに落ちた。

 

翌朝、バレージの帆船にやって来た島の男たちは医師によって、体調を確認することになった。

そのこともあり、ジョシュ自身がルチアの様子を見に行きたかったのだが、エラが代理を務めることになる。

祖母では帆船の急な階段を上るのが困難なため、エラが頼まれたのだ。
 
エラは胸を高鳴らせて、ユリウスの帆船の下までやって来た。

こんな幸運一生に一度あるかないかだ。

内心では帆船で病気を診てもらっているルチアが羨ましくもあった。

エラはドキドキする胸を押さえるように、布に包まれたルチアの服を身体の前で持っている。

ジョシュから帆船に行ってルチアの様子を見てきてほしいと頼まれて、エラはわざわざ一番いい服に着替えた。

綿のピンク色のワンピースで、ラーヴァの街で父親が買ってきてくれたものだ。

「何の用だ?」
 
帆船の下で見張りをしている近衛兵にエラは鋭い口調で尋ねられる。

「あ、あの、ルチアに服を……」
 
ジョシュに行けば大丈夫だと言われたが、強面の近衛兵ふたりが怖くてエラは泣きそうだ。楽しみでドキドキしていた胸は早くも怖さで暴れている。

「ついてこい」
 
エラはすぐに帆船に入ることを許された。近衛兵のひとりが急な階段を上っていき、エラはおずおずとついて行く。
 
甲板でジラルドが彼女を待っていた。

ジラルドは兵士のあとから上がってくる娘の金色の髪を見て目を見張った。そしてすぐに顎でそろえられたブロンドにサファイアブルーの瞳に驚いた。

亡くなったエレオノーラ姫に似ているのだ。


< 52 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop