国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
第四章 嵐の夜に知った真実
こっそりユリウスとエラ一家の乗る帆船を見送ってから1ヵ月が経った。

時が経ってもルチアのユリウスへの想いは日を追うごとに増してきて、胸が苦しくなるばかりだ。
 
ユリウスと出会う前までの元気もなくなり、最近は洞窟の前でぼんやり海を見て一日が終わる。

そんなルチアに祖母もジョシュもつらい。
 
夕食を食べているときだった。誰も会話をしないまま、黙々と焼き魚を口に運んでいると、ジョシュが口を開いた。

「ルチア、街へ行ってみないか?」

「……えっ?」

「買い物もあるし、エラにも会って来よう。日が昇ると同時に出れば、時間もたっぷりある」

(街へ行けば、ユリウスに会える?)
 
いや、たった一泊しかない滞在ではそれは無理だろう。住んでいる場所も知らないのだ。でも、それでもルチアは街へ行きたいと思った。

「うん……行きたい。おばあちゃん……行ってきていい……?」
 
今まで街へ行きたいと言うと、祖母は反対するため、今回もおそるおそる聞いてみるルチアだ。

「ああ。いいよ。楽しんでおいで」
 
初めて街へ行ってきていいと祖母が言う。ルチアの落ち込みように祖母は心を痛めていたのだ。

「じゃあ、今日は早く寝て、早朝行こう! 長老に船を予約しておいたんだ」
 
ジョシュも久しぶりに街に行けると、嬉しそうだ。
 
島に船は一隻しかなく、燃料などは乗ったものが補充する決まりになっている。ただ、その船を動かせる者はジョシュを入れて3人と限られているのだが。

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