music〜君と奏でて〜
Chapter2

最低な夏祭り

あれから数ヶ月が経って、今日は夏祭り!

そして柊とライブに出ます!

そして現在は出番直前で、あがり症のあたしは控え室で心臓が凄まじい音を立てている。

きっと、顔も引きつってるんだろうなと思っていたその時。

ポンと、誰かの手があたしの頭を撫でた。

「だだ、誰?」

びっくりして声が上ずる。

「誰はないでしょ」

その声がして慌てて振り返るとそこには。柊がいた。

そして、柊に頭を撫でられていると分かった瞬間。

さっきの緊張していた時よりもすごい音を立てる心臓。

…なんでなんだろう。

ただ、〝柊に頭を撫でられている〟というだけなのに。

それ…だけなのに…。

…コレは“恋”って分かってる、でも、分かりたくないっ…!

だから忘れなきゃ…だなぁ。

「おーい、出番直前に暗い顔すんな!俺がささえてあげるから」

…やっぱり、柊は優しい…なあ。

「そ…だね」

ツンと鼻が痛くなる。

少しずつ、少しずつ視界がボヤ〜としてくる。

そして、溢れそうとなった時。

「Brightnessの方、出番です〜!」

スタッフのお姉さんが走ってくる。

…泣いてる場合じゃないよね。

「頑張ろうぜ!」

前を向いていた柊がこっちを見て笑う。

「うん!頑張ろ!」

そうだよね!

〝あの事〟は忘れて精一杯頑張ろう。




















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